読書

【読書ログ】EQトレーニング

※個人の理解と感想です。

読もうと思ったきっかけ

購入は2025年3月。

Emotional Inteligence(EQ)に関しては、ダニエル・ゴールマン氏の「EQ心の知能指数」を読んで以来読んでいなかった。

しかし、子どもの教育にもとても関係ありそうだなとふと思い出したのと、子育て中の自身のめまぐるしい感情の変化を目の当たりにしてもう一度EQに興味を持った。

ボリュームが少なくさっと読めそうで、価格的にも手が届きやすく、Amazonの評判も良かったこちらをチョイス!

出版日・著者・構成

出版日は2020年1月。

著者の高山直氏は、日本におけるEQ理論の第一人者で、米国で提唱されたEQ理論を日本で初めて紹介し広めた人物とされる。

1995年に米国発祥のEQに出会い、EQ理論提唱社の協力のもと完成させたEQトレーニングを、EQの説明から紹介する一冊。

構成は全5章、203ページ。

  • 第1章 ビジネスで求められるEQスキル
  • 第2章 EQの発展と今
  • 第3章 感情とは何か
  • 第4章 EQのトレーニング
  • 第5章 さらに鍛えたい人へー高山スペシャル

内容

第1章は、ビジネスシーンにおけるEQの重要性が説明される。

ダボス会議でもEQは非常に重要なテーマとして議論され、2016年のanual reportでは2020年に必要なビジネススキル10の第6位にランクイン。

2001年にはエール大学の教授がEQの高い組織では低い組織に比べて成果を生み出しやすいという研究結果を示した。

EQは変化適応力ともいわれ、「変えることが容易なのは性格ではなく感情」という一文と共に、EQを高め変化に適応することの重要性も述べられる。

第2章は、EQとは具体的に何を指すのかが説明される。

EQはエール大学学長を務めるピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士が1990年に発表した理論。

両博士が発表した論文では、”We define emotional intelligence as the subset of social intelligence that involves the ability to monitor one’s own and others’ feelings and emotions, to discriminate among them and to use this information to guide one’s thinking and actions.” ​と定義される。

つまり、「個人が自分自身や他者の感情を認識し、それらを区別し、その情報を思考や行動の指針として活用する能力」を指す。

この能力は、①感情の識別、②感情の利用、③感情の理解、④感情の調整の4分類からなる。

①感情の識別は、自分自身の勘定と相手の感情を識別する。感じる。

②感情の利用は、問題、課題を解決するために必要な感情を生み出す。元気が必要なら前向きな気持ちを、冷静さが必要なら落ち着いた気持ちを。

③感情の理解は、発生した感情を理解しどのように解決するかを考える。

④感情の調整は、望ましい決定をする上で感情を活用する。①~③を統合して最終調整。

第3章は、EQの根幹である感情に関する説明

感情は情報とともにやってくる(違和感など)。

感情と合理性は対立するものではなく、感情をうまく使って理性を発揮したからこそ合理的でいられる。

感情と思考(IQ)を統合することで高度な意思決定を可能にする。

感情は記憶を強化し蘇らせる。

上記のような「感情」と何かの関係性が説明された後に、感情自体の構造が説明される。

心理学者のロバート・プルチックが1980年に提唱した「情動の円環モデル」だ。

(ちなみに情動は心理学用語で、情動(emotion)は短時間で消失する急激な感情を指し、時間の経過を経て徐々に穏やかな感情=気分(mood)に移行する。情動も気分も感情に包含されるとのこと。)

本書P88より引用

本書では、感情を色彩で分けたプルチックのモデルを簡略化した円環モデルが紹介される。

プルチックは、根源的な感情として、内環に記載された8つの純粋感情(喜び、受容、恐怖、驚き、悲しみ、嫌悪、怒り、期待)を挙げ、正反対の感情を逆の位置に示す。喜びの反対は悲しみ。

これら8つの感情は最も強い状態では交じり合うことはないが、純粋感情の濃度が薄い外環では、感情が交じり合った8つの混合感情(愛、服従心、畏敬、失望感、後悔、侮辱感、攻撃心、楽観)が存在する。

このモデルによって、自分や相手の混合感情を感じた時に、その元となる感情をより詳細に理解できる(例えば、攻撃心を感じたら、相手の期待と怒りとに分けて理解できる)。

また、コミュニケーションにおいては、情報の伝達よりも先に、感情の共有を行う方がよいといったコツも示される。

第4・5章は重要性を明らかにしたEQの鍛え方を具体的なトレーニングと共に述べた内容。

本書を購入するとEQ診断を無料で受験できる。トレーニング前後で受験し自身の変化を感じることが推奨されている。

具体的には、第2章で示されたEQ理論の4分類(①識別、②利用、③理解、④調整)をさらに細かく分けた12指標ごとに評価される。

①識別は、自分の感情を自覚する自己自覚力、相手の感情を察知する他者察知力、感情を的確に言葉で示す感情語彙力

②利用は、目的に応じて感情を抑える感情抑制力と感情を作り出す感情総出力

③理解は、感情の発生原因を分析する感情分析力、自分や相手の感情変化を推察する感情推察力、相手の立場を理解する感情共感力

④調整は、目的のためにEQ能力を統合する感情活用力、感情を悟られないようにする感情秘匿力、感情を伝えるための感情表現力、感情のままの行動を防ぐ一時静止力

これらの指標がロースコアだった場合、どのように開発していけばよいかのヒントがそれぞれ記載されている(結果次第なので詳細は割愛)。

感想

プラス

EQを簡単に短時間で理解しなおすにはちょうど良いボリューム。

第3章の感情の説明は前半は読み飛ばしながらだったが、情動の定義やプルチックのモデル等初めて得られた知識も多く楽しかった。

EQを理解したい人は第2章、EQの根幹である感情を理解したい人は第3章を、EQを鍛えたい人は第4・5章を部分的に読むのもよさそう。

マイナス

日本語の説明や表現がどうも自分にはしっくりこないものが多かった(特に第2章)。

関連して、著者が引用したEQの定義やその日本語訳も気になったので、論文を確認する必要があった(この記事では著者の説明ではなく、EQのサイトに記載された定義とAIによる日本語訳を記載した)。

具体的なEQトレーニングが紹介される第4・5章はよくある内容でさっと読み飛ばした部分も多かった。

MBAや会社の人事トレーニングで似たような内容を何度も行ってきたので既視感がありやや物足りなかった。

また、第5章の対人関係編に記載された内容は、若者向けのコミュニケーションではないような印象を直感的に受けた。

しかし、全体を通じては、EQを鍛える王道の方法に大きな違いはないということだと理解。

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